クリニックでの診療はもちろん、女性の生涯健康に関するさまざまな啓発活動を積極的に行っていらっしゃる対馬ルリ子先生。女性にとって子宮を中心とした婦人科系の悩みは一生切り離せないものですが、そんな女性たちの身体について、総合的に長い目でサポートしてくれる強い味方でいらっしゃいます。今回のインタビューでは、時代の流れとともに変わってきた病気の傾向、そして私たちが自分の身体についてどう向き合っていけばよいのかについて、さまざまなお話を伺いました。
ライフスタイルの変化がおよぼす、子宮をめぐる環境
●対馬先生は女性の身体、子宮について、長年にわたって患者さんを診ていらっしゃいます。最近の患者さんの傾向で気になることはありますか。
対馬先生:昔の女性の健康問題って、主に妊娠・出産問題だったと思うんですね。何しろ若い時から子どもをたくさん産んでいましたし、子宮も乳房も、妊娠・出産・子育てのために、つねに使っているような状況でした。ところが、ライフスタイルが多様化した今の女性たちは成熟した機能を持っていても「使う」ということがとても少なくなっています。昔に比べると、出産の回数も期間も短くなっていますからね。やっぱり子宮は妊娠のためにあるものだし、頻繁に使いながらチェックするということもなくなったわけですから、子宮内膜症、子宮頸がんなどの病気にかかるのも低年齢化が進みました。
●低年齢化は、本当に気になる傾向です。
対馬先生:ライフスタイルの変化ということで言えば、高校生など、かなり若い世代から性行動が始まっていますよね。それが良い・悪いという議論以前に、そういったライフスタイルに合わせた検診やケアが必要だと思うんですよね。ところが、そのことにみなさんまだまだ気付かずに、適切な検診やケアをする機会を失っているというのが、今の現状だと思います。学校でセクシャリティに関する教育もなされていない。20歳も過ぎれば8、9割の方が性行動の経験があるわけで、それなのにそういった方々がまったくノーチェックで暮らしているというのは、非常に心配なことだと思います。どんなに若くても、のぞまない妊娠や感染、がんなど、健康リスクについての知識をきちんと持っていれば、行動が慎重になるはずですから。
かかりつけの、女性のための総合医を目指して
●先生のクリニックには、そういった若い世代の患者さんもいらっしゃいますか。
対馬先生:お母さんが娘さんを連れてくるというケースは多いですね。最初は「娘の生理痛が重い」とか「受験や部活の試合に生理が重ならないようにしたい」といった理由で受診されるのですが、相談をいろいろしているうちに、娘さんの方から「最近、彼氏ができました」などという報告をされたりすることもあります。思春期の娘さんは、お母さんには言いにくいことも私たちには話しやすいみたいで……。そうすると、私たちも娘さんにどんなことに気を付けたらよいのか、的確に伝えることができます。お母さん側も何となくそろそろかな……という思いで娘さんを連れてきていらっしゃるようなので、そういう風に親子での良い継承がもっと増えるといいなと思いますね。
●対馬先生が2002年にオープンされた「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック」の医療方針を教えてください。
対馬先生:私が自分の医療の中でやりたいと思っているのは、身体と心とその人の生活がトータルで健康であるということ。イキイキとしたその人らしいよい状態を一生続けられるために、予防、早期発見、心のケアも組み合わせて診ています。これまでの日本の医療って、とにかく対症療法一本やりで、痛みが出て、本格的に病気になってからでないときちんと診てもらえない。もちろん病院には生死に関わる病気の方がいらっしゃいますから、どうしてもそっちの方が優先になってしまうんですね。でも、患者さん一人ひとりにとっては、本当に病気になる前に予防をしていくことが重要なので、なるべく生活に近いところ——たとえるならば美容院のように定期的に気軽に訪れてもらえるような場所として、みなさんの健康づくりができるようにしたいと思っています。子宮や卵巣のチェックをしたり、ホルモンのバランスを見たり……そうやって細かく自分の内側、弱い部分がわかっていると、自分自身にかえって自信が持てるようになるんですね。今後、自分がどうしていきたいか——お仕事をバリバリ続けていきたいのか、すぐにでも出産したいのか——私たちは、その人が「どうしたいか」ということをいちばんに考えながら、かかりつけの“女性のための総合医”としてずっと見守っていける存在でありたいと思っています。
対馬 ルリ子
(つしま るりこ)
産婦人科医・医学博士
ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック理事長



